所得控除② 支出に関する控除 ── 払ったお金を、所得から差し引く
「医療費やふるさと納税は、いくら所得から引けるの?」に、控除の4つの型で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 所得控除 | 所得の合計(総所得金額等)から差し引く控除。人の事情(家族など・第11回)と、支出(この回)に関するものがある |
| 総所得金額等 | 総所得金額に、分離課税の所得などを加えた合計。医療費控除の足切りや寄附金控除の上限の計算に使う |
| 社会保険料控除 | 健康保険・厚生年金・国民年金などの保険料を払ったとき、払った額をそのまま差し引く控除 |
| 生命保険料控除 | 生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料を払ったときの控除。枠ごとに上限がある |
| 医療費控除 | 1年間に払った医療費のうち、足切りの額を超えた部分を差し引く控除 |
| 足切り | 控除の対象にならない最初の部分。医療費控除では、一定額か総所得金額等の一定割合の少ないほう |
| 寄附金控除 | 国・地方公共団体(ふるさと納税)や認定NPO法人などへの寄附金から、一定額を引いた額を差し引く控除 |
| ワンストップ特例 | 確定申告をしない人が、ふるさと納税の控除を住民税だけで受けられるしくみ。確定申告をすると使えない |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。控除額などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
支出に関する所得控除を4つの型(払った額そのまま・上限あり・足切りあり・一定額を引く)に分けて、それぞれの計算と、健太さんの所得控除の合計を自分の言葉で説明できるようになること。
※ 払ったお金がそのまま全部引けるわけではありません。どこで差がつくかを、5つのステップで見ていきます。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。
図で見る:支出に関する控除の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 払った額そのまま
社会保険料 110万円 → 社会保険料控除 110万円(払った額そのまま)
STEP 2 上限あり
生命保険料 10万円 → 5万5,000円 / 地震保険料 3万円 → 3万円
STEP 3 足切りあり
医療費控除 = 25万円 − 補塡 0円 − 足切り 10万円 = 15万円
STEP 4 2,000円を引く
寄附金控除 = 6万円 − 2,000円 = 5万8,000円
STEP 5 合計
支出 139万3,000円 + 家族と本人 105万円 = 所得控除の合計 244万3,000円
健太さんが1年に払ったお金(講座の共通事例)
会社員の健太さん(44歳)は、妻の彩さん・長男の陽向さん(14歳)と暮らしています。この1年に払ったお金のうち、所得控除に関係するものは次のとおりです。
| 払ったお金 | 中身 | 払った額 |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 健康保険・厚生年金など(給与から天引き) | 110万円 |
| 生命保険料 | 一般の生命保険(新契約) | 10万円 |
| 地震保険料 | 自宅の地震保険 | 3万円 |
| 医療費 | 家族の通院・入院(保険金などの補塡はなし) | 25万円 |
| 寄附金 | ふるさと納税(確定申告をするので、申告書に書く) | 6万円 |
| 合計 | 154万円 |
※ 健太さんの総所得金額等は615万円です(第10回)。陽向さんは14歳で、23歳未満の扶養親族に当たるため、生命保険料控除の令和8年分の特例が使えます。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
健太さんの5ステップ
| ステップ | 健太さんの場合 | 控除額 |
|---|---|---|
| ① 払った額そのまま | 社会保険料 110万円 をそのまま | 110万円 |
| ② 上限あり | 生命保険料 10万円(特例の上限 6万円)/地震保険料 3万円 | 5万5,000円 3万円 |
| ③ 足切りあり | 医療費 25万円 − 足切り 10万円 | 15万円 |
| ④ 2,000円を引く | 寄附金 6万円 − 2,000円 | 5万8,000円 |
| ⑤ 合計 | 支出に関する控除 139万3,000円 + 家族と本人の控除 105万円(第11回) | 244万3,000円 |
やってみよう:医療費と寄附金を動かす
医療費と寄附金を動かして、控除額がどう変わるかを見てみましょう。総所得金額等を切り替えると、医療費の足切りの額も変わります。
※ 体験用の簡単な計算です。医療費控除はセルフメディケーション税制と選択、寄附金控除の上限は総所得金額等の40%です。ふるさと納税は住民税からも控除されますが、ここでは所得税の所得控除だけを表示しています。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | ステップ |
|---|---|---|
| 生命保険料控除(新契約・1つの枠) | 最高 4万円 | ② |
| 一般の生命保険料(23歳未満の扶養親族がいる場合の特例) | 最高 6万円 | ② |
| 生命保険料控除の合計 | 最高 12万円 | ② |
| 地震保険料控除 | 最高 5万円 | ② |
| 医療費控除の足切り | 10万円か総所得金額等の5%の少ないほう | ③ |
| セルフメディケーション税制(通常の医療費控除と選択) | 1万2,000円を超えた分、最高 8万8,000円 | ③ |
| 寄附金控除 | 寄附金(総所得金額等の40%まで)−2,000円 | ④ |
| ふるさと納税のワンストップ特例(確定申告をしない人) | 寄附先が5団体以内 | ④ |
控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。生命保険料控除の特例は、令和8年分と翌年分だけの措置です。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。「4つの型」という仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 医療費は10万円を超えないと無理
足切りは「10万円」と「総所得金額等の5%」の少ないほうです。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円より少ない額から控除が始まります。② 保険料は払った分だけ全部引ける
社会保険料は払った額そのままですが、生命保険料・地震保険料には上限があります。生命保険料は枠ごとの上限と、合計の上限の両方があります。③ ふるさと納税はワンストップ特例のまま
確定申告をすると、ワンストップ特例は使えなくなります。医療費控除などで確定申告をする年は、ふるさと納税の寄附も全部、申告書に書きます。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 支出に関する所得控除は、4つの型で考える:払った額そのまま・上限あり・足切りあり・一定額を引く。
- 社会保険料・小規模企業共済等掛金は、払った額がそのまま控除になる。
- 生命保険料・地震保険料は上限あり。生命保険料は枠ごとと合計に上限があり、令和8年分は23歳未満の扶養親族がいると一般の枠が広がる。
- 医療費は、補塡された額を引き、足切り(10万円か総所得金額等の5%の少ないほう)を超えた分。寄附金は、寄附金から2,000円を引いた分。
- 確定申告をすると、ふるさと納税のワンストップ特例は使えない。健太さんの所得控除の合計は244万3,000円。
参照条文・出典
参照条文:所得税法72条(雑損控除)、73条(医療費控除)、74条(社会保険料控除)、75条(小規模企業共済等掛金控除)、76条(生命保険料控除)、77条(地震保険料控除)、78条(寄附金控除)、租税特別措置法41条の17(医療費控除の特例)、令和8年度税制改正による生命保険料控除の特例(23歳未満の扶養親族がいる場合)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第5章第1節「所得控除の種類」(p.93)、第2節1〜7(pp.94〜104)(講本PDF)、国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』(生命保険料控除の特例)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。「4つの型」は入門向けの整理です。旧契約の生命保険料・旧長期損害保険料、医療費控除の上限、寄附金控除のうち政党等への寄附の税額控除、雑損控除の計算は扱っていません。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。