MENU

第2回 誰に、何に課税する?|所得税入門講座

所得税 入門講座|第2回(v4)

誰に、何に課税する? ── 納税義務者と非課税所得

「親からもらったお金にも、所得税はかかる?」に、納税義務者の区分と非課税所得の考え方で答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第1回(計算の地図)条文:所得税法2条・5条・7条・9条令和8年分の法令で計算
第1章 全体像123
第2章 所得の種類と金額45678
第3章 事業の所得と赤字910
第4章 所得控除と税額111213
第5章 納税と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
納税義務者所得税を納める義務がある人。原則として個人(法人も利子・配当などの源泉徴収の場面では納税義務者になる)
住所その人の生活の本拠。客観的な事実で判定する
居所住所ではないが、相当の期間続けて住んでいる場所
居住者国内に住所がある個人か、現在まで引き続いて1年以上国内に居所がある個人
非永住者居住者のうち、日本の国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所があった期間の合計が5年以下の個人
非居住者居住者以外の個人
国内源泉所得日本国内で生じた所得(国内の勤務による給与、国内の不動産の賃料など)
非課税所得法律で、所得税を課さないとされている所得。原則として手続なしで課税の対象から外れる
申告不要所得税はかかるが、源泉徴収で納税が済んでいるので、確定申告に含めなくてよい扱い(第1回の株式)
年分と数字この講座は令和8年分の法令で計算しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
所得税を納めるのは誰か(居住者・非永住者・非居住者)と、それぞれ課税される所得の範囲、そして法律で課税しないとされている非課税所得があることを、自分の言葉で説明できるようになること。
由紀さんが父の修さんからもらったお金200万円
→
個人からの贈与で取得したもの非課税所得
→
由紀さんの所得税かからない
健太さんが満期で受け取った生命保険金300万円
→
自分で保険料を払った保険の満期金非課税ではない
→
健太さんの所得税かかる(一時所得)

※ 由紀さんがもらった200万円は、所得税はかかりませんが、贈与税の対象になります(相続税入門講座 第10回)。健太さんの満期保険金のくわしい計算は第7回で扱います。

ハルカ先生、由紀さんがお父さんの修さんから200万円もらったそうです。これも所得税の計算に入れるんですか?
先生それは所得税がかからないんだ。個人からの贈与でもらったものは、所得税の「非課税所得」なんだよ。
ハルカもらったお金なのに、所得税がかからないんですか? 第1回で、受け取ったお金にはまず名札を付けると習いました。
先生よく覚えていたね。今日は名札を付ける前に、「そもそも誰が所得税を納めるのか」「課税されないお金はどれか」を確かめるよ。
ハルカ健太さんの満期保険金300万円も、もらったお金だから非課税ですか?
先生それは所得税がかかるんだ。健太さんが自分で保険料を払った保険の満期金だからだよ。どこで分かれるのか、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:「誰に」「何に」課税するかの5ステップ

先生最初は「シンプルな例」の会社員Aさんで5ステップを通してみよう。左のボタンで「青山家」にも切り替えられるんだ。
ハルカAさんは、給与のほかにもいろいろなお金を受け取っているんですね。
先生ステップ4で、そのお金を「かかる」「かからない」に分けるよ。まずはステップ1から順に進めていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 所得税を納めるのは、原則として「個人」個人会社員・個人事業主・年金で暮らす人など会社員Aさん会社(法人)会社のもうけ(所得)所得税法人税※ 会社が受け取る利子・配当などは、源泉徴収の場面で 所得税がかかることがある(法人も納税義務者になる)
所得税の納税義務者は、原則として個人(会社のもうけには法人税)
ハルカ所得税は、お金を受け取った人なら誰でも納めるんですか?
先生所得税を納めるのは、原則として個人なんだ。左の図のように、会社のもうけには所得税ではなく法人税がかかるよ。
🤔 迷いポイント会社にも所得税はまったくかからない?
ハルカ会社は法人税だけで、所得税とは無関係だと思っていました。
先生原則はそうだけど、会社が受け取る利子や配当などは、源泉徴収の場面で所得税がかかることがあるんだ。この講座では個人の所得税を見ていくよ。
💡 そうだったのか!所得税を納めるのは原則として個人。会社のもうけには法人税がかかる。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 納めるのは個人

ハルカ所得税は、お金を受け取った人なら誰でも納めるんですか?
先生所得税を納めるのは、原則として個人なんだ。左の図のように、会社のもうけには所得税ではなく法人税がかかるよ。
🤔 迷いポイント会社にも所得税はまったくかからない?
ハルカ会社は法人税だけで、所得税とは無関係だと思っていました。
先生原則はそうだけど、会社が受け取る利子や配当などは、源泉徴収の場面で所得税がかかることがあるんだ。この講座では個人の所得税を見ていくよ。
💡 そうだったのか!所得税を納めるのは原則として個人。会社のもうけには法人税がかかる。

所得税の納税義務者は、原則として個人(会社のもうけには法人税)

STEP 2 居住者の判定

ハルカ個人なら、日本にいる人もいない人も、同じように課税されるんですか?
先生まず「居住者」かどうかを分けるんだ。左の図のように、国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上国内に居所がある個人が居住者だよ。
🤔 迷いポイント日本人なら居住者、外国人なら非居住者?
ハルカ国籍で決まると思っていました。日本人は全員、居住者ですよね?
先生居住者かどうかは、国籍ではなく住所と居所で決まるんだ。日本人でも海外に生活の本拠を移せば非居住者になるし、外国の人でも日本に住所があれば居住者だよ。
ハルカ住所は、住民票の住所のことですか?
先生住所は「生活の本拠」のことで、住民票だけでなく客観的な事実で判定するんだ。Aさんは日本で暮らしているから居住者だよ。
💡 そうだったのか!居住者かどうかは国籍ではなく、住所(生活の本拠)と居所で決まる。

居住者=国内に住所がある、または現在まで引き続いて1年以上居所がある個人

STEP 3 課税される範囲

ハルカ居住者と非居住者で、何が変わるんですか?
先生課税される所得の範囲が変わるんだ。左の表のように、非永住者以外の居住者はすべての所得、非居住者は国内源泉所得だけが課税されるよ。
🤔 迷いポイント居住者なら、海外で得た所得は日本では課税されない?
ハルカ海外の銀行の利子は、日本の税金とは関係ないと思っていました。
先生非永住者以外の居住者は、国内でも国外でも、すべての所得が課税の対象なんだ。その間にいるのが非永住者で、日本の国籍がない居住者のうち、過去10年以内に日本にいた期間が合計5年以下の人だよ。
ハルカここで初めて国籍が出てくるんですね。
先生そのとおりだよ。国籍を見るのは、居住者の中で非永住者かどうかを分けるときなんだ。
💡 そうだったのか!非永住者以外の居住者はすべての所得、非居住者は国内源泉所得だけが課税される。国籍を見るのは非永住者の判定のとき。

非永住者以外の居住者はすべての所得、非居住者は国内源泉所得だけに課税

STEP 4 非課税所得

ハルカ居住者なら、受け取ったお金にはすべて所得税がかかるんですよね?
先生すべての「所得」が対象だけど、法律で課税しないとされている非課税所得があるんだ。左の図で、通勤手当や宝くじの当せん金は、所得税のかからない側に入っているよ。
🤔 迷いポイント通勤手当は、金額に関係なく全部非課税?
ハルカ通勤手当という名前なら、いくらでも非課税だと思っていました。
先生電車やバスを使う人の通勤手当は、月15万円までが非課税なんだ。超えた分は給与として課税されるよ。
ハルカほかにはどんなものが非課税なんですか?
先生生活に必要な家具や衣服などを売ったお金、火事や事故で受け取る損害保険金や見舞金、宝くじの当せん金などがそうだよ。ただし、貴金属や美術品など高価なものを売った場合は課税されることがあるんだ。
💡 そうだったのか!非課税所得は法律で決められていて、原則として手続なしで課税の対象から外れる。個人からの贈与は所得税ではなく贈与税の対象。

所得税がかからないもの:通勤手当(電車・月1万円)、使わなくなった家具・衣服の売却、自宅の火事で受け取った火災保険金、親からもらったお金、宝くじの当せん金

STEP 5 非課税と申告不要

ハルカ非課税って、第1回の健太さんの株式の「申告不要」と同じことですか?
先生よく覚えていたね。でも、その2つは違うんだ。左の図で比べてみようか。
🤔 迷いポイント申告しなくてよいなら、税金もかかっていない?
ハルカ申告書に書かないなら、税金はゼロだと思っていました。
先生申告不要は、所得税はかかるけれど、源泉徴収で税金を払い終えているから申告に含めなくてよい扱いなんだ。非課税は、そもそも所得税がかからないんだよ。
ハルカどちらも申告書に書かないのに、中身は正反対なんですね。
先生そこが大事なところなんだ。第1回の健太さんの株式は課税されて申告不要、宝くじは非課税、と区別しておこうか。
💡 そうだったのか!非課税=所得税がかからない。申告不要=所得税はかかるが、源泉徴収で払い終えているので申告に含めなくてよい。

非課税=所得税がかからない / 申告不要=源泉徴収で所得税を払い終えている

青山家で確かめる(講座の共通事例)

父(74歳)修母(71歳)美和長男(44歳)・主人公健太健太の妻(42歳)彩長女(41歳)由紀健太の子(14歳)陽向← 彩さんは初登場年齢は「ある年」の12月31日現在父(74歳)修母(71歳)美和長男(44歳)・主人公健太長女(41歳)由紀健太の妻(42歳)彩(初登場)健太の子(14歳)陽向年齢は「ある年」の12月31日現在

青山家の6人は、全員が日本に住所がある居住者(非永住者以外)です。だから、国内・国外を問わずすべての所得が課税の対象になります。そのうえで、受け取ったお金ごとに「所得税がかかるか」を見ます。

人受け取ったお金所得税
健太給与 750万円かかる
健太ブログの広告収入 60万円かかる
健太生命保険の満期保険金 300万円(保険料は健太が負担)かかる
健太上場株式の売却益 30万円(特定口座・源泉徴収あり)かかる(申告不要を選べる)
由紀父の修さんからの贈与 200万円かからない(贈与税の対象)

※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

先生青山家でも確かめておこうか。6人とも日本で暮らしているから、全員が居住者なんだ。
ハルカ居住者なら、すべての所得が課税の対象ですよね。
先生そうだよ。そのうえで、受け取ったお金ごとに非課税所得に当たるかを見るんだ。左の表では、由紀さんの贈与だけが所得税のかからない側にあるよ。
ハルカ由紀さんの贈与は、相続税入門講座の第10回 ↗にも出てきましたね。
先生そこでは、贈与税と、相続のときの生前贈与加算を見たんだ。所得税・贈与税・相続税は、同じお金に二重にかからないように分担しているんだよ。

健太さんの地図はどう変わる?

確かめること健太さんの場合結果
① 個人か会社員として給与を受け取る個人所得税の納税義務者
② 居住者か日本に住所がある居住者
③ 課税範囲日本国籍があるので非永住者ではないすべての所得
④ 非課税所得はあるか給与・ブログ・満期保険金・株式の売却益は、どれも非課税所得に当たらないなし
⑤ 申告不要株式の売却益は所得税がかかるが、源泉徴収で済んでいるので申告不要を選ぶ第1回の地図の①へ
ハルカ健太さんの場合、第1回の計算の地図の前に、今日の5つを確かめるんですね。
先生そうだよ。個人で、居住者で、すべての所得が対象で、非課税所得はなしと確かめてから、第1回の地図の①に進むんだ。
ハルカ株式の売却益は、課税だけど申告不要なんですね。
先生そのとおりだよ。ボタンを押すと、上の図が青山家に切り替わるから、1ステップずつ確かめてみようか。

やってみよう:所得税はかかる? かからない?

それぞれのお金について、所得税がかかるかを選んでください(会社員・居住者の場合)。
3つ目=所得税はかからない(非課税)が、かわりに相続税・贈与税の対象になるもの

ハルカどのお金が非課税なのか、試してみたいです。
先生左の10枚について「所得税がかかる」「所得税がかからない」「かからないが相続税・贈与税の対象」から選んでみよう。選ぶと理由が出るよ。
ハルカ2つ目と3つ目の区別が難しそうです。
先生3つ目も所得税の非課税所得の仲間だけど、贈与税や相続税の課税対象になることがあるんだ。実際に税金がかかるかどうかは、それぞれの税金のルールで判断するよ。もらった相手が個人か会社かにも注意しようか。

令和8年分の数字(この回で使ったもの)

項目令和8年分くわしくは
居住者になる居所の期間(国内に住所がない場合)現在まで引き続いて1年以上この回
非永住者の判定(日本の国籍がない居住者)過去10年以内に住所・居所の期間が合計5年以下この回
非課税の通勤手当(電車・バスなどの交通機関を使う人)月15万円までこの回
上場株式の売却益(特定口座・源泉徴収あり)の源泉徴収20.315%(住民税を含む)第8回

控除額などの数字は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。

ハルカこの回の数字は、年によって変わるんですか?
先生居住者や非永住者の期間は法律の定義で、めったに変わらないんだ。通勤手当の非課税の上限などは、見直されることがあるよ。
ハルカ改正があったら、ここの数字が変わるんですね。
先生そうだよ。この講座は年分ごとの数字を1か所で管理しているから、改正のときはそこを差し替えるんだ。

よくある間違い

① 国籍で居住者かどうかが決まる

居住者かどうかは、住所(生活の本拠)や居所で判定します。国籍を見るのは、居住者のうち「非永住者」に当たるかどうかを判定するときです。

② 親からもらったお金は、税金がかからない

個人からの贈与で取得したものは、所得税は非課税です。ただし、贈与税の対象になります。所得税と贈与税・相続税が二重にかからないようにしているのです。

③ 「非課税」と「申告不要」を混ぜる

非課税は所得税がそもそもかからないこと。申告不要は、所得税はかかるが源泉徴収で納税が済んでいるので申告に含めなくてよいことです。
ハルカ②は、まさに最初の私の勘違いです。もらったお金は全部、税金がかからないと思っていました。
先生所得税がかからないだけで、贈与税の対象になるんだよ。どの税の対象かを分けて考えるのが大事なんだ。
ハルカ③も、第1回の株式を思い出して区別できました。
先生それは大きな進歩だね。申告書に書かない理由が、税金がないからか、払い終えているからかを見分けようか。

ミニテスト(3問)

Q1. 所得税の「居住者」に当たるのは、次のうちどれ?
Q2. 所得税の非課税所得に当たるのは、次のうちどれ?
Q3. 「申告不要」の説明として正しいものは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 所得税を納めるのは、原則として個人。会社のもうけには法人税がかかる。
  2. 国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人が居住者。それ以外は非居住者。
  3. 課税される範囲は、非永住者以外の居住者はすべての所得、非永住者は国外源泉所得以外と国内払い・国内送金の分、非居住者は国内源泉所得だけ。
  4. 通勤手当(月15万円まで)・生活用の動産の譲渡・損害保険金や見舞金・宝くじの当せん金・相続や個人からの贈与で取得したものなどは非課税所得。
  5. 非課税は所得税がかからないこと、申告不要は所得税は源泉徴収で済んでいること。
先生今日のまとめだよ。所得税を納めるのは個人で、居住者かどうかは住所と居所で決まるんだ。居住者はすべての所得が対象だけど、非課税所得は課税されないよ。
ハルカ誰が納めるか、どこまでが対象か、課税されないものはどれか、の3段階で確かめる……ですね。
先生順番はそのとおりだよ。1つだけ足すと、非課税でも贈与税や相続税の対象になるものがあることを忘れないでほしいんだ。
ハルカ宝くじが当たったら、まず「非課税だ!」と叫んでから喜びます。
先生叫ぶ前に、当たっているかを確かめようか。次の第3回では、所得の10種類の中身と、課税のしかたの3つの違いを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:所得税法2条1項3号〜5号(居住者・非永住者・非居住者)、5条(納税義務者)、7条(課税所得の範囲)、9条(非課税所得)、所得税法施行令20条の2(非課税とされる通勤手当)、当せん金付証票法13条(宝くじの当せん金)

参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第1章第3節「非課税所得」(pp.4〜7)、第2章第1節「納税義務者及び課税所得の範囲」(pp.8〜9)(講本PDF)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の解説であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生所得税法2条が居住者・非永住者・非居住者の定義、5条が納税義務者、7条が課税所得の範囲、9条が非課税所得だよ。所得税法ラボ ↗で条文から引けるんだ。
ハルカ宝くじの当せん金は、所得税法には書いていないんですか?
先生宝くじは、当せん金付証票法という別の法律で非課税とされているんだ。講本の非課税所得の表にまとまっているよ。
所得税 入門講座 第2回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる
このテーマで、まだ知りたいことはありませんか?
他社事例、自社の場合の迷い、追加で見たいデータなどを教えてください。多くの実務家に共通する課題は、データ・記事・ツールの形で調査し公開します。