所得は10種類、課税のしかたは3つ
「給料も、株の利益も、預金の利子も、全部まとめて計算するの?」に、10種類の所得と3つの課税のしかたで答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 所得の種類(所得区分) | 利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑の10種類。種類ごとに計算のしかたが決まっている |
| 担税力 | 税金を負担する力。同じ金額でも、所得の性質(働いて得たか、資産から得たか、毎年か一度きりか)で違うと考える |
| 総合課税 | ほかの所得と合計して、累進税率で計算する方法 |
| 申告分離課税 | ほかの所得と合計せず、その所得だけで別の税率で計算し、確定申告する方法(土地建物・株式等の譲渡など) |
| 源泉分離課税 | 支払のときに一定の税率で天引き(源泉徴収)され、それで課税が完結する方法(預金の利子など) |
| 申告不要 | 源泉徴収で税金を納めたことにして、確定申告に入れないことを選べる仕組み(上場株式の配当、特定口座の譲渡など)。非課税とは違う |
| 総所得金額 | 総合課税の所得金額を合計したもの(第1回) |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。税率などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
所得は10種類に分かれ、分ける理由は所得の性質で税金を負担する力(担税力)が違うから。そして課税のしかたには総合課税・申告分離課税・源泉分離課税の3つがあり、さらに「申告不要」を選べるものがある――これを自分の言葉で説明できるようになること。
※ 会社員Aさんは、給与収入500万円・預金の利子・上場株式の売却益20万円(特定口座・源泉徴収あり)がある設定の例です。
※ 金額は令和8年分の法令で計算した学習用の試算です。
図で見る:10種類の所得と3つの課税のしかた(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 10種類の所得
10種類:利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得
STEP 2 なぜ分けるのか
同じ金額でも、所得の性質(働いて得たか・資産から得たか、毎年か一度きりか)で担税力が違う
STEP 3 総合課税
給与所得 356万円 = 総所得金額 356万円(総合課税の所得だけを合計)
STEP 4 申告分離課税
上場株式の売却益(特定口座) 20万円:所得税等 30,630円+住民税 10,000円 = 40,630円(ほかの所得と合計しない)
STEP 5 源泉分離と申告不要
源泉分離=天引きで完結 / 申告不要=天引きで済ませることを選べる / 非課税=かからない
青山家で確かめる:5人の所得を仕分ける
| 人 | 受け取ったお金 | 所得の種類 | 課税のしかた |
|---|---|---|---|
| 健太 | 給与 750万円 | 給与所得 | 総合課税 |
| ブログの広告収入(副業)60万円 | 雑所得 | 総合課税 | |
| 生命保険の満期保険金 300万円 | 一時所得 | 総合課税(1/2) | |
| 上場株式の売却益 30万円(特定口座) | 譲渡所得 | 申告分離→申告不要を選ぶ | |
| 彩 | 3月までの給与 90万円 | 給与所得 | 総合課税 |
| 退職金 300万円 | 退職所得 | 分離課税(ほかと合計しない) | |
| 修 | 公的年金 240万円 | 雑所得 | 総合課税 |
| X社株式の配当 72万円 | 配当所得 | 選べる(総合・申告分離・申告不要) | |
| 預金の利子 | 利子所得 | 源泉分離課税 | |
| 美和 | 公的年金 90万円 | 雑所得 | 総合課税 |
| 由紀 | 料理教室の売上 600万円 | 事業所得 | 総合課税 |
| 賃貸マンション1室の家賃 96万円 | 不動産所得 | 総合課税 |
※ 金額は受け取った額(収入)です。所得金額の計算は第4回以降で1つずつ見ていきます。修さんの預金の利子の額は設定していません。
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。
健太さんの所得を「計算の地図」に置く
| 地図のステップ | 健太さんの場合 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 所得の種類に分ける | 給与→給与所得、ブログ→雑所得、満期保険金→一時所得、上場株式→譲渡所得 | 4種類 |
| 課税のしかたを見る | 給与・雑・一時は総合課税。上場株式の譲渡は申告分離課税で、特定口座なので申告不要を選ぶ | 総合課税3つ |
| ② 総合課税の所得を合計 | 給与所得 565万円+雑所得 45万円+一時所得の1/2 5万円 | 615万円 |
やってみよう:所得区分クイズ(10問)
受け取ったお金が、10種類のどの所得に当たるか選んでください。(答えは典型的な場合の目安です。実際の区分は、規模・継続性・契約の中身などの事実で変わることがあります)
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 上場株式等の譲渡(申告分離課税)の税率 | 所得税等 15.315% +住民税 5% | 第8回 |
| 特定口座(源泉徴収あり)で天引きされる率 | 20.315% | 第8回 |
| 上場株式の配当で天引きされる所得税等 | 15.315% (ほかに住民税) | 第7回 |
| 一時所得の特別控除(このあと1/2) | 50万円 | 第7回 |
所得税等=所得税と復興特別所得税。税率などの数字は改正で変わることがあります。10種類の区分と3つの課税のしかたの仕組みは変わりません。
よくある間違い
① 「申告不要」を「非課税」と思う
申告不要は、天引き(源泉徴収)で税金を納めたことにして確定申告に入れないだけです。非課税(第2回)は、そもそも税金がかかりません。② 分離課税の所得まで給与と合計する
株式の売却益や土地建物の売却益は、原則としてほかの所得と合計せず、別の税率で計算します。総所得金額に入るのは総合課税の所得です。③ 区分を名前だけで決めつける
副業の収入が事業所得か雑所得かは、規模・継続性・帳簿などの事実で決まります(第6回)。同じ「売った」でも、商品なら事業所得、土地や株式なら原則として譲渡所得です。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 所得は10種類:利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑。
- 分けるのは、同じ金額でも所得の性質で税金を負担する力(担税力)が違うから。
- 総合課税:ほかの所得と合計して、累進税率で計算する。
- 申告分離課税:土地建物や株式などの譲渡は、合計せず別の税率で計算する。退職所得・山林所得も、ほかの所得と分けて計算する。
- 源泉分離課税は天引きで完結。上場株式の配当などは申告不要を選べる(非課税とは違う)。
参照条文・出典
参照条文:所得税法21条(課税標準・税額の計算の順序)、22条(課税標準)、23条〜35条(利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑の各所得)、租税特別措置法3条(利子所得の分離課税)、8条の5(確定申告を要しない配当所得等)、31条・32条(土地建物等の譲渡所得の分離課税)、37条の10・37条の11(株式等の譲渡所得等の分離課税)、37条の11の3〜37条の11の5(特定口座)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第3章「所得の種類」(pp.14〜25。所得の性質による分類と担税力 p.14)、第4章第3節「所得税の課税の特例」(pp.44〜55。分離課税 p.44、源泉分離課税・確定申告を要しない配当所得 p.49〜)(講本PDF)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正は国税庁の『令和8年分 年末調整のしかた』等で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の解説であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。