税額の計算と税額控除 ── 税率をかけて、税額から引く
「課税される所得に税率をかけたら終わり?」に、5つのステップの図で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 課税総所得金額 | 総所得金額から所得控除を引いた金額(千円未満切捨て)。税率をかける元になる |
| 超過累進税率 | 所得が一定の段を超えると、超えた部分にだけ高い税率をかけるしくみ |
| 速算表 | 段ごとの計算を「課税される所得×税率−控除額」の1回で済ませるための表 |
| 算出税額 | 課税総所得金額に税率をかけて出した所得税の額 |
| 税額控除 | 算出税額から直接差し引くもの(住宅借入金等特別控除・配当控除など) |
| 基準所得税額 | 税額控除を引いたあとの所得税の額。復興特別所得税の計算の元になる |
| 復興特別所得税 | 東日本大震災からの復興のための税。基準所得税額に一定の率をかけて、所得税と一緒に納める |
| 年分と数字 | この講座は令和8年分の法令で計算しています。税率などの数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
課税総所得金額に超過累進税率をかけて所得税を出し、税額控除を引いて復興特別所得税を加えるまでの流れと、所得控除と税額控除の違いを、自分の言葉で説明できるようになること。
※ 青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値で、令和8年分の法令で計算しています。源泉徴収や年末調整で納めた分との精算は第14回で扱います。
図で見る:税額の計算の5ステップ
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 課税される所得
615万円 − 244万3,000円 = 課税される所得 370万7,000円(千円未満切捨て)
STEP 2 超過累進税率
370万7,000円 × 20% − 42万7,500円 = 算出税額 313,900円(速算表)
STEP 3 税額控除
算出税額 313,900円 − 住宅借入金等特別控除 175,000円 = 基準所得税額 138,900円
STEP 4 復興特別所得税
138,900円 + 復興特別所得税 2,916円 = 141,816円
STEP 5 配当の選び方
修さんの配当:申告不要 110,268円で完結 / 総合課税 110,268円 還付 / 申告分離 差し引き0円
健太さんの税額(講座の共通事例)
第4回から第12回で出した、健太さんの所得と所得控除です。今日は、ここから所得税の額を出します。
| 項目 | 中身 | 金額 |
|---|---|---|
| 総所得金額 | 給与所得・雑所得・一時所得の2分の1(第10回) | 615万円 |
| − 所得控除の合計 | 社会保険料・配偶者・基礎控除など(第11・12回) | 244万3,000円 |
| = 課税総所得金額 | 千円未満切捨て | 370万7,000円 |
| 算出税額 | 速算表で計算 | 313,900円 |
| − 税額控除 | 住宅借入金等特別控除(令和5年入居) | 175,000円 |
| = 基準所得税額 | 138,900円 | |
| + 復興特別所得税 | 基準所得税額 × 2.1% | 2,916円 |
| 所得税及び復興特別所得税 | 141,816円 |
修さんの配当:3つの選び方で比べる
修さん(74歳)は、年金のほかに上場株式の配当 72万円 を受け取り、15.315%(所得税・復興特別所得税)の 110,268円 が源泉徴収されています。
| 選び方 | 修さんの所得税(所得税及び復興特別所得税) |
|---|---|
| 申告不要 | 源泉徴収の 110,268円 で完結(確定申告に入れない) |
| 総合課税 | 課税される所得 30万円 → 算出税額 15,000円 → 配当控除で 0円。源泉徴収の 110,268円 が還付 |
| 申告分離課税 | 配当 × 15.315% = 110,268円(源泉徴収と同じ額で、差し引きゼロ) |
※ 年金から源泉徴収された所得税は、この比較では考えていません。申告すると、住民税・国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)などに影響することがあります。どれを選ぶかは、全体で考えます。
やってみよう:所得控除と税額控除、同じ10万円で比べる
課税される所得を動かして、所得控除10万円と税額控除10万円で、所得税及び復興特別所得税がいくら減るかを比べましょう。
※ 体験用の簡単な計算です(復興特別所得税を含む)。税額控除は、税額が10万円以上ある場合です。
令和8年分の数字(この回で使ったもの)
| 項目 | 令和8年分 | くわしくは |
|---|---|---|
| 所得税の税率(超過累進) | 5%〜45% | ステップ② |
| 復興特別所得税 | 基準所得税額 × 2.1% | ステップ④ |
| 住宅借入金等特別控除(令和4・5年入居の一般の新築住宅) | 年末残高(上限 3,000万円)× 0.7%、13年間 | ステップ③ |
| 配当控除(上場株式等の配当・総合課税) | 配当所得 × 10%(課税総所得金額等1,000万円以下の部分) | ステップ③ |
税率や控除の率は、税制改正で変わることがあります。この講座では年分ごとの数字を1か所で管理し、改正のときに差し替えます。住宅ローン控除の率・期間・限度額は、入居した年や住宅の種類で変わります(応用で)。「課税される所得×税率 → 税額控除 → 付加税」という流れは変わりません。
よくある間違い
① 税率の段に入ると、所得全体にその税率
所得税は超過累進税率です。高い税率がかかるのは、段を超えた部分だけ。速算表の「×税率−控除額」は、段ごとの計算の合計と同じです。② 所得控除と税額控除は同じ効果
所得控除は所得から引くので、減る税金は「控除額×税率」くらい。税額控除は税金そのものから引くので、控除額がそのまま減ります。③ 配当は総合課税にすれば必ず得
所得税が戻っても、申告すると住民税や国民健康保険料などに影響することがあります。所得税だけで決めず、全体で考えます。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 課税総所得金額=総所得金額−所得控除。千円未満は切り捨てる。
- 税率は5%〜45%の超過累進。高い税率は段を超えた部分だけにかかる。速算表で「×税率−控除額」と計算する。
- 算出税額から税額控除(住宅借入金等特別控除・配当控除など)を引く。税額控除は所得控除より効き目が大きい。
- 税額控除のあとの基準所得税額×2.1%の復興特別所得税を加えて、所得税及び復興特別所得税の額になる。
- 配当は申告不要・総合課税・申告分離課税から選べる。住民税や保険料などへの影響も含めて考える。
参照条文・出典
参照条文:所得税法89条(税率)、92条(配当控除)、租税特別措置法41条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財源確保法)13条(復興特別所得税の額)
参考資料:税務大学校『所得税法(基礎編)令和8年度版』第6章「税額計算」(p.121〜)、第11章「復興特別所得税」(p.177〜)(講本PDF)、『令和8年分 年末調整のしかた』(住宅借入金等特別控除の表)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。配当控除は、課税総所得金額等が一定以下の部分の率だけを扱い、住宅借入金等特別控除は、健太さんの入居年・住宅の種類の場合だけを示しています。外国税額控除などほかの税額控除や、変動所得・臨時所得の平均課税は扱っていません。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年分の法令に基づく学習用の試算であり、個別の申告には税理士等にご確認ください。青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。